「寝ながら学べる構造主義」①

この本は、内田樹さんという、フランス現代思想を専門とする元大学教授の方が書かれています。内田樹さんは、毎年数々の書籍を書かれており、大きな書店では彼のコーナーが設けられていることも多々あります。「わかりにくいことを、非常にとっつきやすく書く」ということが上手い方です。今回の書籍も、フランス現代思想という難しい分野の入門書ではあるのですが、タイトル通り、寝ながら学べてしまうような心地よいテンポで、読み進めて行くことができます。では早速、内容に進んで行きましょう。

 

◼️構造主義は終焉したのか

     我々が生きる現代は、思想史的な区分では、「ポスト構造主義」の時代と呼ばれます。「ポスト」とは、ラテン語で「〜以後」という意味ですので、言ってみれば、構造主義がひと段落した時代というところでしょうか。

     しかし、ひと段落したと言っても、構造主義が途絶えてしまったわけではありません。むしろ、構造主義の思考方法が、我々にとってあまりにも自明のものになった時代と言えるでしょう。

     では、我々の思考の型を作っている、構造主義とはどのようなものなのでしょうか。簡単に言うならば、「人によって見える景色は別物であり、その景色をどう捉えるかは等価である」といった考え方です。A国人とB国人のものの見方はとりあえず、等権利的であり、いずれが正しいのかということは、にわかには判定し難い。このような考え方は、すでに常識となっていますが、世界的に常識として定着したのは、ここ30年程という、非常に若い常識なのです。

 

◼️構造主義の源流 カールマルクス

     すべての構造主義者に共有される、構造主義の源流となるのがマルクスの思想です。マルクスは、人間には普遍的人間性が宿っているという伝統的人間観を退けた人間です。彼は、人間の個別性は、その人が「何者であるか」ではなく「何事をなすか」によって決定されると考えました。

     主体性の起源は、主体の「存在」にではなく、主体の「行動」のうちにある。人間は、動物のように、ただ自然的に存在していることには満足できないのです。